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西日本豪雨2年 荒れゆく農地「再開いつ」 集落営農経営に影 - 日本農業新聞

 2018年7月の西日本豪雨から2年がたった。被災地では、多くの農地・農業用施設が今も復旧を果たせていない。相次ぐ災害で工事業者の確保が難しいところに、新型コロナウイルスが追い打ちを掛けた。荒れてゆく田畑を前に、被災農家は焦りを募らせている。

 広島県呉市。東部の中山間地、市原地区は約13ヘクタールあった田が土砂災害で3ヘクタールになった。7月、かつては青い稲が風にそよいだ棚田は、雑草に覆われたままだ。

 地区の24戸のうち、営農を続けるのはわずか8戸。11戸は移住した。

 県の復興モデル地区として被災1カ月後の18年8月には復旧へのロードマップができた。しかし19年度に完了予定だった災害復旧事業は、業者の不足やコロナ禍もあり、被害の査定すら終わっていない。市原自治会長の中村正美さん(70)は「市原の農業が途絶えてしまう」と焦る。

 


 豪雨被害が大きかった岡山、広島、愛媛の3県で、災害復旧工事が完了した農地・農業用施設は、6月末時点で岡山県が74%(1207カ所)、広島県は31%(1351カ所)、愛媛県は34%(502カ所)にとどまる。

 工事の遅れは集落営農法人の経営にも影を落とす。広島県東広島市の農事組合法人うやまは、米や野菜を栽培する全農地40ヘクタールが被災した。うち10ヘクタールはいまだ手付かずだ。

 経営面積の減少と獣害の増加で、19年度は10年に法人を設立後、初めて赤字に転落した。7月中旬、ようやく復旧工事の入札があり、事態の進展に期待が掛かる。
 

業者不足 復旧進まず


 中山間地では工事業者が不足して入札が不調に終わり、工事の発注ができないケースがある。
 愛媛県西予市の久保谷集落で米を作る橋本勝さん(66)は「街中はきれいになってきたけど、中山間地はまだまだ」と、ため息をつく。

 農道を歩き、山際に近づくと災害の爪痕が生々しい。急な増水で地盤ごと崩れた水路は、応急措置をして何とか水田3ヘクタールに水を入れている。今年の長梅雨で水路を支える地盤がさらに崩れた。

 同じ工事で5カ所をまとめて国の災害復旧事業に申請したが、4カ所で工事業者が決まらない。橋本さんは「地域で農業を続けるためにも早く工事をしてほしい」と話す。災害復旧事業は原則、被災後3年度以内の工事完了が求められ、21年3月の期限が近づく。

 復旧工事を担う土木・建設業者も不安を募らせる。西予市で工事を請け負う西建設の二宮実千雄社長は「災害復旧事業の期限までに全ての工事を終わらせるのは難しい」と頭を抱える。

 災害復旧で通常に比べ2、3倍の工事を抱えて人手不足な上、中山間で手の掛かる農業関連の工事は後回しになりがちという。二宮社長は、自らも米と栗を栽培する兼業農家だ。「農家の気持ちはよく分かる。早く工事したいが、件数が多過ぎて抱えきれない」(鈴木健太郎、丸草慶人)
 

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