夢と希望を詰め込んで、極上の華やかさかに満ち溢れたハイジュエリーの世界。パリ屈指の高級エリア、ヴァンドーム広場に旗艦店を構えるジュエラーをはじめ、多くのメゾンがパリ・オートクチュール・ファッションウィーク期間中に新作コレクションやアーカイブピースを展覧した。
経済活動が落ち込んだコロナ禍では、各ファッションブランドの勝敗が大きく分かれた一方で、ハイジュエリーは市場全体が活況となった。富裕層から中間層が、海外渡航ではなく高級品への消費にシフトしたことと、先行き不安定な時代に資産価値としてジュエリーへ投資したことが背景にあると考えられる。需要の高まりは、ジュエラーの情熱を刺激し、創造性をさらなる高みへと引き上げるに違いない。今季パリで披露された作品にも、すでにその片鱗が現れている。無限に煌めく夢の世界へと誘ってくれた、新作コレクションをご紹介。
カルティエ(CARTIER)
“ボーテ デュ モンド(Beautés du Monde)”は、世界の美を見い出す「カルティエ」の新たなハイジュエリーコレクション。自然や文化の要素からインスピレーションを得て、厳選されたストーンで美を称える。2022年6月13日(月)、スペインのマドリードで先んじて発表されたコレクションに加えパリでもさらなる新作が発表された。
計86.92カラットのエメラルドを贅沢にセッティングしたネックレスでは、豊かな川の流れ、生命力にあふれた波の動き、自然の神秘を感じさせる潮の満ち引きを圧倒的な構図で表現。オーバルシェイプのエメラルドと細やかなオープンワークで、絶えず動く波模様を思わせ、シャグリーンセッティングがほどこされたダイヤモンドは反射して煌めく水面や、渦を彷彿とさせる。
色彩豊かなこのリングでは、エキゾチックな果実がインスピレーション。ブルーグリーントルマリン、ピンクトルマリン、マンダリンガーネットを組み合わせた、大胆な色石のコンビネーションで魅了する。
「カルティエ」の視点を通して壮大なる自然の美しさをハイジュエリーに閉じ込めた“ボーテ デュ モンド”。世界の美を寄せ集めたコレクションで、 私たちの感情を刺激し、圧倒的な美しさで陶酔を誘う。
ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)
「ヴァン クリーフ&アーペル」は“ミステリーセット ジュエルズ”と第2章となる“レジェンド オブ ダイヤモンド”を通して、1906年から受け継がれるダイヤモンドへの情熱を表現した。メゾンの豊かな伝統にインスパイアされたこれらのコレクションは、その創造の歴史を辿り、異なる時代や芸術潮流を反映した独自のスタイルを改めて再解釈する。
’20年代のアールデコの抽象的かつ幾何学的なデザインや、’60年代のゴールド細工と呼応するさまざまな仕上げが施された“フェ ナイカ クリップ”では、イエローゴールドの岩の上で羽を休める妖精の姿を呈する。ダイヤモンドの川のような作品“ファビュラス フィフティズ ネックレス”は50年代という華やかな時代に敬意を表し、モチーフかデコルテにしっくりと馴染むように、チョーカー部分は精密にデサインされている。’40年代以来の“バレリーナ クリップ”に代表されるように、メゾンがダンスの世界と結んできた絆がさらに深まっていったことを物語る、ダンサーたちが見せるアーチ型のフォーメーションをジュエリーに写し取った“ファス ア ファス クリップ”も披露。
“ミステリーセット ジュエルズ”の主要な作品のひとつである“シェブロン ミステリユー ネックレス”は、1950年代のファッションと、 当時のイブニングドレスに流行した交差する襟のデザインに着想したピース。複雑なセッティング技法は、メゾンのアトリエの宝石細工職人と宝飾職人の緊密な共同作業の賜物であり、 エメラルドの濃く均一なグリーンとサファイアの深いブルーが織りなすコントラストを際立たせる。
クチュールのモチーフに宿るエレガンスを表現した“ヴォリュート ミステリユーズ ネックレス”とグラフィカルなデザインが目を引く“コルレット ミステリユーズ”。ダイヤモンドとルビーで配され、首元を飾る繊細なレースのよう。特別な感動を呼び起こす数々の宝石の美を高めてきた「ヴァン クリーフ&アーペル」の歴史。研ぎ澄まされた探求心により、これからもメゾンは情熱に満ちた旅を続けていくこととなる。
シャネル(CHANEL)
「シャネル」はBijoux de Diamants(ダイヤモンド ジュエリー)の誕生90周年を祝し、“コレクション 1932”を発表。1932とは、ガブリエル・シャネルが最初にダイヤモンドジュエリーを制作した年に由来する。世界大恐慌に見舞われた当時、ダイヤモンド商業組合からの依頼でジュエリーデザインを手がけたガブリエル。伝統に縛られ閉鎖的だったジュエリー界の既成概念を打ち破り、新たな美学をもたらしたことでも有名である。
“コレクション 1932”を発表した会場パリ・グランパレ エフェメラルには、ガブリエル自身がデザインした、現存する貴重なアーカイブピースに加え、当時彼女が自宅で発表した様相を模したスペースも設けられた。現在では一般的になっている、マネキンを使ってジュエリーを見せる手法も、ガブリエルが最初に行った画期的な見せ方。
“コレクション 1932”はガブリエルの作品に着想して、コメット(彗星)、月、太陽という天体をテーマに、生き生きとした全77点の壮観なジュエリーで構成されている。単体もしくは星々と共に描かれているコメットは、その光とオーラでラッキーチャームのごとく、身に着ける女性の運命を見守ってくれるような存在。
ユニークな星座を描くネックレスや、流れ星の一瞬の煌めきを捉えたブローチ、星が連なるスパイラル状のブレスレット。今季のオートクチュール・コレクションのショーにもコメットのジュエリーが登場し、自分らしい方法で自由にジュエリーを身に着け、モードと融合させるアイデアが体現されていた。
オリジナルのコレクションでは1点のジュエリーでしか表現されていなかった月は、本来備わっていた魅力が引き出され、独自のアイコンとして新たに18点が並ぶ。オリジナルデザインの三日月は90年の歳月を経て満ち、ほのかな光輪を放つ満月としても登場。ガブリエルが最も情熱を注いだ太陽は、グラフィカルな要素を強調して比類なきパワーをもたらした。
夜空のようなブルーサファイア、燃える太陽のようなイエローダイヤモンド、銀河のように密度の高いオパール、夜明けのような光を放つスピネル。オリジナルのコレクションがシンプルに、純粋な白い光を象徴するものであったとしたら、“コレクション 1932”は多彩な色のジェムストーンで最高の存在感を発揮する、宇宙の新しいストーリーとして生まれた。
ショーメ(CHAUMET)
「ショーメ」は水や生命の源である“海”をテーマに、“オンドゥ ゼ メルヴェイユ ドュ ショーメ”と題した新作コレクションを発表。1780年の創業以来、さまざまな自然の要素からインスピレーションを得てきたが、海にフォーカスを当てた作品は本作が初めて。3つのチャプターに分けて67ピースで構成されたコレクションで、海にまつわる生命への賛歌を叙情的に表現した。
25カラットのミントグリーンのエメラルドとマダガスカル産サファイアで表すのは、寒流と暖流がぶつかりあうドラマチックなメキシコ湾流の様子。
深い海でひっそりと佇むサンゴ礁、華やぐビーチとカラフルなパラソルを彷彿とさせる鮮やかな色の組み合わせや、空と海の星を結びつける天然パールをあしらったネックレスなど、海の詩的な雰囲気をバリエーション豊かに魅せた。
人形の歌声を意味する“シャン ドゥ シレンヌ”は、緑色に輝くタヒチ産の宝石で、神秘と魅惑に満ちた想像上の海の生き物をネックレスで表現。水中で宝探しをするように、見る者を無限のインスピレーションに溢れた海の旅へと誘うコレクションに仕上げた。
エルメス(Hermès)
「エルメス」の新作ハイジュエリーは、影の戯れを意味する”ジュ・ドゥ・オンブル(Les jeux de l’ombre)”と題された。影という捉えどころのないものに形を与えることがテーマ。ジュエリー部門クリエイティブ ディレクター、ピエール・アルディは新コレクションを通して、影の動き、光と影、そのふたつを結びつけるコントラストを表現する。
ブラックジェイドやブラウンダイヤモンド、ブルーサファイヤなどバリエーション豊かなストーンによる影が、宝石にグラデーションやモノクロームのシェードをまとわせる。ジュエリーそのものを引き立てると同時に、光と影の繊細な戯れによって生まれるそれぞれの魅力も強調した。境界線を越えて伸びる黒い影の輪郭は、力強くカラフルな輝きを放つ。
開閉するたびに宝物を影の内に隠したり光のもとに照らしだす機構が採用された独創的なネックレスや、あえて未加工のダイヤモンドをセッティングしてありのままの素材の美しさを追求したリング。ユニークで繊細なパヴェセッティングによるアプローチが柔らかな輪郭となる影を生み出し、アトリエの職人技がこの上なく発揮されている。
ディオール(DIOR)
「ディオール」ファイン ジュエリー アーティスティック ディレクター、ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌは以前から抱いていた「ジュエリーにプリントを施したい」という願望を実現させた。新ハイジュエリーコレクション "ディオール プリント(Dior Print)”で、オートクチュールのドレスのように揺れ動く、華やぎと喜びに満ちた137ピースを発表。
平面のファブリックに描かれているモチーフを立体のジュエリーで再現するという斬新な発想から、チェックやストライプ、タイダイのカラーグラデーション、ジオメトリック、リバティプリントなど、上品なモチーフをあしらった。プリントデザインの鮮明さだけでなく、オートクチュールのドレスが肌に触れた時の柔らかさ、シルキーなそよ風のように優しく肌をなでる究極のなめらかさにもこだわった。
それらを可能にするのは、アトリエの卓越したサヴォアフェール。オートクチュールのモチーフをジュエリーのサイズで再解釈するため、職人たちはセッティングの種類だけでなく、セットする密度に関しても慎重に調整を重ねたという。
3色のゴールドを用いたマルチカラーのリボンを織り合わせたネックレス、サファイアとダイヤモンドで再解釈されたネイビーチェック、色とりどりのサファイアとホワイトダイヤモンドとアメシストで花びらを表現したフラワーモチーフをストライプと組み合わせたピースで、匠の技を惜しみもなく披露する。卓越した職人技が余すことなく注がれた "ディオール プリント”コレクションは、時代に先駆けてストーリーを物語るディオール ハイジュエリーコレクションの歴史に新たな新章として綴られた。
メシカ(MESSIKA)
各界のセレブリティたちに絶大な人気を誇る「メシカ」は、“ビヨンド・ザ・ ライト(BEYOND THE LIGHT)”の全37点を発表した。古代エジプトの魅惑的で神秘的な魅力を探求した新コレクション。マスターピースは、エジプトの翼をもつスカラベという神話的なテーマを昇華させた荘厳な “Akh-Ba-Ka”シリーズのネックレス。110カラットのダイヤモンドの原石から特別に切り出された33カラットのダイヤモンドがセンターにセットされ、同じ原石から切り出された15個のダイヤモンドもあしらわれ、幻想的でピュアな光が特徴。
見た目を翻弄する神秘的なチョーカー“ディバイン・エニグマ”は、ダイヤモンドの極上の輝きでホワイトゴールドの魅惑的な装いを演出。古代エジプト神話に登場するタカの太陽神ホルスの目である“ウジャット”を現代的に再解釈し、ファッション性の高いお守りジュエリーとして登場したネックレスは「メシカ」の独創的なデザインを象徴する。革新的なダイヤモンドのセットにより、鮮やかで神秘的に満ちたコレクションが誕生した。
マリー リヒテンベルク(MARIE LICHTENBERG)
2019年創設の「マリー リヒテンベルク(Marie Lichtenberg)」は、今もっとも注目を集める新進ハイジュエラー。フランス版「エル」のエディターとして12年のキャリアをもつマリー・リヒテンベルクは、アンティークジュエリーに没頭した幼少期の夢と情熱を、新たな人生の指針にすべくブランドを立ち上げた。出発点は、彼女が14歳の時に母親から譲り受けたロケットペンダント。母親の故郷であるカリブ海に浮かぶ小さな島、マルティニークでは、職人によって手作業で作られたロケットネックレスを世代を超えて受け継ぐのが伝統だという。幼かったマリーはジュエリーがもつ感情的な価値を胸に刻み、物語を込めた作品を世界に届けたいという願いを抱いたという。
たった一人で始めたブランドで最初に制作したのが、現在ブランドのシグネチャーとなっているロケットペンダント。“Every Little Thing Gonna Be Alright(全てうまくいくから大丈夫)”や、“Vivons Heureux Vivons Cachés(幸せに生きるために、謙虚に生きよう)”といったメッセージを刻むのも、マルティニークの伝統。ダイヤモンドのセッティングやポリッシャー、彫刻はイタリアの熟練した職人によってハンドメイドで行われ、世代を超えて受け継がれる上質なハイジュエリーを生み出している。付け替え可能なチェーンネックレスの他に、インドの職人によるサリーの糸で編まれたフォークロア調のネックレスも、唯一無二のアイコニックな作品。
技巧が光る繊細なディテールと、カラフルで遊び心に富んだデザイン、個人的な物語を込めた「マリー リヒテンベルク」のジュエリーは着実にファンを増やし、ボンマルシェ百貨店でのショップインショップ、ロンドンのリバティ百貨店、大手ECのマッチズファッションやネッタポルテと販路を広げている。何世代にも渡って継承されたマルティニークの伝統が真のお守りジュエリーとして、時代も国境も超えて、パリから世界へと受け継がれていく。
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