
可憐なピンクローズを繊細に表現するために、取り入れたのは伝統的なシャンルヴェ エナメルという技巧。金属の土台に絵柄を彫った後、職人が手作業でエナメルを施し、焼成と研磨を繰り返す。ただ地金にエナメルを塗っているわけではなく、彫った箇所をエナメルで埋めているのだ。大雑把に生きてきた私なんかは、その精緻な工程を聞いただけで気が遠くなってくる。片手でたやすく握り込んでしまえるほどの小さなリングに描かれたタイニーローズに、クラフトマンの情熱が凝縮されている。『情熱の薔薇』と歌ったのはザ・ブルーハーツだが、このシグネットリングもまさに、情熱の花を咲き誇らせている。

「美しい花には棘がある」ということわざがある。美しいものは危険性も孕んでいるから気をつけなさいという意味で使われているけれど、そもそもバラの花にはどうして棘がついているのだろう。しかも、危険な棘があるのになぜ「愛の象徴」とされているのだろう。シシのリングを見ていると、そんなことがふと気になってしまって、ふたたび調べてみる。
いくつか説はあるようだが、そのうちのひとつに「自分自身を支えるため」というのがあった。バラはツル性の植物なので、自分で立ち上がることができない。そのため、棘をフックのように周囲の植物に引っ掛けることで上に伸びていくことができる。つまり、誰かを傷つけるための棘ではなく、自分で起き上がれないときに、そばにいる誰かに支えてもらうための棘なのだ。なんて人懐っこくてやさしい棘なんだろう。途端に愛しさが込み上げてくる。棘を引っ掛けられる相手も、ちょっとぐらい痛くても肩を貸してあげようという気持ちになりそうじゃないか。いいな、私も欲しいな、そんな憎めない棘が。
40歳を目前に思うのは、年齢もキャリアも重ねれば重ねるほど、誰かに頼ることが難しくなっていくということ。時には鋭い棘をむき出しにしてでも「助けて!」と叫びながら、思いっきり誰かに寄りかかってもいいのかもしれない。愛と情熱とウィットに満ちたシシ ジュエリーのローズが、大事なことを思い出させてくれた。
cherish inc.(シシ ジュエリー)
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